東洋医学と女性の身体②

先日投稿した「東洋医学と女性の身体」に引き続き、女性ならではの不調や疾病に備えるために、東洋医学的な健康観についてお話させていただきます。

「肝」が女性の身体のキーマン

「血の道症」といわれる女性特有の症状には東洋医学の五臓六腑のうち、「肝」「脾」「腎」の3つが主に関わっているというお話を前回させていただきました。

血の道症(ちのみちしょう)とは、月経妊娠出産、産後、更年期など女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである[1]

血の道症 – Wikipedia

いずれも重要なはたらきをもっていますが、特に今回お話させていただく「肝(かん)」が女性特有の症状をはじめ、現代人ではとくにさまざまな不調のキーマンとなっています。

肝と女性特有の症状

「肝」の主なはたらきは2つあります。

1つは「疏泄(そせつ)」作用。

これは、気血の巡りをスムーズにすることです。

もう1つは「蔵血(ぞうけつ)」作用。

西洋医学の肝臓も全身の5分の1に相当する血液が常時流れ込んでいるように、東洋医学の「肝」においても同様に血(けつ)をストックしていると考えます。ただ、それだけでなく、必要なところに血を送り届けるというはたらきも含まれています。(「心」などのはたらきも必要)

もし「肝」に問題が生じると、これらのはたらきがうまくいかず血流が滞り「瘀血(おけつ)」というドロドロ血が生じることになります。

ちなみに、現代の子宮筋腫やがんなどの疾患も瘀血の一種であると東洋医学では考えます。

女性の場合、月経により定期的な出血があることから男性に比べて血と密接なため、血流が滞ることで不調が生じやすいのです。

また、瘀血は結果的に生じた病態ではあるものの、瘀血自体が2次的な病因としてさまざまな症状を引き起こすこともあります。

「肝」をそこなう最たるものは精神的ストレス

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ではいったい何が「肝」のはたらきを害(そこな)わせるのでしょうか?

それはズバリ

精神的なストレスです。

とくに今の時期(春)は季節の変わり目に加えて学校や会社の行事も多く、精神的なストレスを受けやすい時期です。

「肝」と関りが深い感情(情動)は「怒り」ですが、東洋医学(とくに中医学)では、イライラしやすかったり落ち込んだり、抑うつ気味の状態を「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と言います。

「肝気鬱結」の状態がつづくと、感情の起伏が激しくなること以外に、ため息が増え、女性では生理痛や周期の乱れ下腹部の痛み肋骨まわりの張る痛みなどがあらわれます。

私見となりますが、とくに春先から梅雨前にかけては生理周期の乱れを訴える方が多いように思います。

尚、これらの症状には「肝」のみならず「腎(じん)」のはたらきも大きく関連します。

とはいえ、ストレス社会と言われる現代において、また血の影響を受けやすい女性の身体は「肝」をとくに養生していくことが大切と言えるでしょう。

肝経にある女性に重宝するツボ

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「肝」の状態があらわれる肝経というエネルギーラインには重要なツボが存在します。

しかし、脾経に比べると常用するツボは多くなく、また女性だけではなく男女共に有効なツボが存在ます。

今回はその中でも特に私が常用しているツボを2つご紹介しますね。

太衝(たいしょう)

足の親指から甲に向かって指を滑らせていくと、骨と骨の間で指が止まるところに太衝(たいしょう)というツボがあります。

このツボは肝経の中で最も重要なツボといっても過言ではありません。

精神的なストレス肝臓の疲労に効果が期待できます。

中封(ちゅうほう)

太衝ほど有名なツボではありませんが、中封(ちゅうほう)もよく使われます。

効果としては、生理痛をはじめ婦人科系疾患の症状緩和や、鼠径部(股関節あたり)の痛み、さらには急な腰の痛みにも著効することがあります。

私見ですが、女性特有の症状をお持ちの方は股関節や足首の痛みや違和感を抱えていることが多いように思います。

ちなみに下のイラスト(向かって右)をご覧になっていただくとわかると思いますが、経絡というエネルギーは表にみられるメインルート以外に深部を走行しています。中でも肝経は生殖器を通るため、女性に限らず男性の生殖器関連の症状とも密接です。参考までに。

出典元:アラウンドセラピー®経絡経穴概論テキスト

まとめ

今回は「肝」について女性の身体との関連を説明してきました。

「肝」が肝臓のはたらきにとどまらず、女性の不調にどのように影響しているのか、

なんとなくご理解いただけたでしょうか?

「肝」は気血の巡りとイライラを中心としたネガティブな感情と密接な関係にあります。

普段からストレスが全くない状態というのはありえませんし、感情というものが悪いものではありません。しかし、情動が長引いてしまったり、あまりにも強すぎる精神的なストレスは身体に害を及ぼすことがあります。

このような知識とともに、医師や薬剤師といった専門家を頼ることも忘れずご自身の身体を労わってあげることを忘れないでください。

さて、今回は第2回となりましたが、「脾」、「肝」とつづきましたので、次回は「腎」についてお話していきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

少しでもお役に立てれば幸いです。