先日投稿した「東洋医学と女性の身体」「東洋医学と女性の身体②」に引き続き女性ならではの不調や疾病に備えるため、東洋医学的な健康観についてお話させていただきます。
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「腎」は生殖器系も意味する
「肝」「脾」「腎」3つの五臓が主に女性の身体と密接であるという話をしてきました。
いずれも重要なはたらきをもっていますが、今回お話させていただく「腎(じん)」は泌尿器系である腎臓のはたらき以外に、成長や発育、さらには生殖器系のはたらきも意味します。
つまり、女性における子宮や卵巣のはたらきも「腎(じん)」に含まれるのです。
腎と女性特有の症状
「腎」は「腎精(じんせい)」というエネルギーを蔵しています。
これは、私たちが成長・発育していくことにはじまり、性行為や妊娠、出産などにおいて欠かせない物質であると考えられています。すなわち、生命力の源と言えるでしょう。
もし腎が生まれながらに弱いと、成長や発育(女性なら初潮が遅いなど)に遅れがみられます。
さらに腎は「水分代謝」の中心であり、「骨(こつ)」や「髄(ずい)」(脊髄・骨髄・脳髄)、「脳」や「歯」の状態と密接です。
女性に多い冷えやむくみ、不妊にも「腎」が関わっていますし、加齢とともに表れやすい歯や骨の衰え、認知機能の低下も腎の衰えと考えます。
ちなみに女性特有の症状と深く関わる「血」は、栄養以外に「腎精」からもつくられるとため(骨髄における造血系)、たしかに腎と関わっています。しかし、「血」との関わりよりも副腎や卵巣、脳から分泌されるホルモンバランスによる心身への影響の方が重要であると言えるでしょう。
「腎」と密接な感情について
「腎」のはたらきは「肝」と同様、精神的なストレスの影響を大きく受けます。
「肝」が怒りの感情と密接であるのに対して、「腎」は「恐れ」と「驚き」です。
恐れや驚きは不安や恐怖といった表現がわかりやすいかもしれませんね。
また、五行で相生関係(親子関係・母子関係とも)にあたる「腎」と「肝」ですが、感情や身体にあらわれる症状についても、母である「腎」の衰えがベースとして子である「肝」に影響を及ぼします。
「ちょっと脅かさないでよ!何なのよ急に」
全く脅かすつもりがないのにこのような反応をされてしまった経験、ありませんか?
不安や恐怖という感情がベースにあると、「怒り」の感情表現があらわれてしまうこともあります。
精神的なストレス以外にも、長期的な肉体疲労や不摂生、さらには加齢によって「腎」の衰えが目立つようになります。
典型的な例としては足腰のだるさや難聴や耳鳴り、骨や歯の衰えなどですが、
女性の場合、年を重ねるごとに生理周期の乱れや卵巣機能の低下、さらには更年期症状などに悩まされることが増えていく傾向にあります。
尚、「腎」の状態があらわれる腎経というエネルギーラインには女性のお悩みに効果が期待できるツボが存在しますが、今回は紹介を割愛させていただきます。
またあらためて腎経の主要なツボについては泌尿器系や腰痛などなどの症状の際に紹介させていただきますね。
まとめ
今回は「腎」と女性の身体について説明してきました。
「脾」「肝」「腎」いずれもが女性の身体と密接な関係にあることを、なんとなくご理解いただけたでしょうか?
「脾」は消化器系の中心ですが、問題があると出血しやすい、経血や不正出血がとまりにくいといった症状があらわれやすくなります。また、「脾」のエネルギーラインには女性の身体に重要なツボがズラリとそろっています。
「肝」は肝臓のみならず、自律神経やホルモンとの関連が深く、なによりイライラや抑うつといったメンタルストレスが引き金となって気血の巡りに影響することを説明させていただきました。
「腎」は副腎や卵巣、脳のはたらきも意味することからホルモンバランスによる症状と密接です。不安や恐怖といった心の状態を観察することも大切ですが、なにより日ごろの働きすぎや不摂生を見直すことが大切です。
東洋医学の考え方は複雑ではありますが、まずは少しずつ、心当たりのあるところだけでも生活習慣を見直すなどして押さえておくといいでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。