前回の足がつる原因と対処法につづいて東洋医学の考え方を紹介していきます。
東洋医学の特徴は、私たち人間が自然の一部であり、同時に自然そのものであるという考え方です。
それはすなわち、気象の変化など大自然の影響を私たちは常に受けながら、同時に五臓六腑を中心とした内側のバランスが心身に大きく影響を与えるというものです。
今回のテーマである「足のつり」または「筋肉の痙攣」「筋肉のぴくつき」といった症状は、気圧の変動や寒さ、湿気、乾燥などの影響も受けますが、それ以上に内側のバランスが関わりますので、少しふみこんで説明していきたいと思います。
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血(けつ)が筋肉を養えないと足がつる
東洋医学では、足のつりに限らず、筋肉の痙攣やピクつきには
「気・血(けつ)・水(津液:しんえき)」という身体を構成する要素のうち、特に血(けつ)が関わっていると考えます。
血(けつ)とは
血(けつ)とは、物質性の高い液体で現代の血液とほぼ同じものです。
ただし、西洋医学における血液の意味だけでなく、血液に含まれる栄養素や血液の巡りについてを意味する言葉です。
つまり西洋医学における血液よりも少し広い概念と言えるでしょう。
この血(けつ)が全身に栄養を与えると考えられており、血(けつ)の異常は大きく3つに分類されます。
- 血虚(けっきょ):血が不足している状態
- 血瘀(けつお):血が滞っている状態
- 血熱(けつねつ):血に熱を帯びている状態
上記のうち、今回の「足がつる」といったケースに関連するのが「血虚(けっきょ)」です。
つまり、血が筋肉をうまく養えていない状態ということです。
血と関連の深い五臓
血(けつ)は五臓六腑の「脾」を中心として消化器系により飲食物から生成され(つくられ)、「心」や「肺」のはたらきによって全身へ運ばれて行きます。
また、血(けつ)がつくられる(生成)のは後天的な栄養面(「脾」による)だけでなく、「腎」のはたらきも重要と考えます。
しかし、今回の「足がつる」といったケースで最も血(けつ)と関りが深いのは「肝」です。
つまり、血(けつ)とは五臓それぞれが個々に関わっていますが、今回のような「足がつる」というテーマでとくに重要なのは「肝」と「腎」になりますので、詳しくみていきましょう。
肝と血の関係
血(けつ)と最も深い関係にあるのが「肝」です。
「肝」のはたらきは大きく2つに分類されます。
- 疏泄(そせつ):気血の巡りをスムーズにする
- 蔵血(ぞうけつ):血をストックし、全身の血流量をコントロールする
疏泄(そせつ)とは
「肝」は西洋医学における肝臓のはたらきに加え、自律神経系や内分泌系(ホルモン)との関連が深いため、心の状態、すなわちメンタル面ととくに密接です。
そのため、怒りの感情によって「肝」はバランスを崩しやすく、同時に「肝」に問題があるとイライラしやすいといったことが生じます。
このような状態は「気」の巡りを滞らせ、「血」(けつ)もまたスムーズに運行できなくなるため長きにわたると血瘀(けつお)という状態に至ってしまいます。
また、東洋医学の「肝」は西洋医学の肝臓だけを意味するわけではありませんが、メンタルストレスや肉体疲労に加え、加齢や肥満、脂肪肝、糖尿病、過剰なアルコール摂取によって肝臓内の酸化ストレスを促進させることも知られています。
あらためて生活習慣を見直すことが「肝」を養生する上で大切であることがわかりますね。
蔵血(ぞうけつ)とは
肝臓には全身の約5分の1もの血液が流れています。
また、肝臓には血液だけでなく、三大栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質)に加えビタミンやミネラルといった微量栄養素も貯蔵されています。
さらに、蔵血(ぞうけつ)には全身の血液量をコントロールするはたらきも含まれています。
西洋医学の言葉で説明するならば、自律神経により血管の収縮を調節することに相当します。
このようなことからも「肝」が自律神経やメンタル面と密接な関係があることがうかがいしれるのではないでしょうか。
肝と筋肉
下記の表(五行色体表:ごぎょうしきたいひょう)をご覧いただくとわかるように、「肝」の縦の列には筋肉の「筋(きん)」という文字がみられます。
これは、「肝」に問題があると「筋」に問題が表れることを意味しています。
筋肉はグリコーゲンを貯蔵する役割などから西洋医学でも「第2の肝臓」と言われています。
また、「脾」の列には「肌肉(きにく)」とありますが、こちらも実は筋肉を意味する言葉で、よく東洋医学を学び始めたころに学生が混乱するところです。
しかし、肌肉はあくまで見た目、すなわち身体の痩せ具合といったところ(筋肉の大きさ)を意味するものと考えましょう。一方で、「肝」の「筋」はその機能、すなわち‘筋肉のはたらき’に注目したものと言えます。
このあと説明する「腎」の状態が「骨」にあらわれるというところも大切なポイントです。
腎と血の関係
こむらがえりの原因として「冷え」もよく挙げられますが、そこと密接なのが「腎」になります。(もちろん血流という意味で「肝」も関わります)
また、「腎」は骨や骨髄、歯や脳と関りが深い五臓です。
いずれも加齢の影響を受けますから、腎は加齢と密接な関係があることがわかりますよね。
また、骨髄といえば血液細胞をつくる組織ですから、「腎」が血液の生成に関わっているということも腑に落ちます。
また、骨にはミネラルも貯蔵され、腎臓はミネラル代謝にも関わっています。
さらに、意外と知られていませんが、「腎」のはたらきは二陰(お通じとお小水の状態)にも表れるため、お腹を下す(下痢)ことによる脱水にも関わっていることがあります。
脱水によってこむらがえりが生じることもありますから、こういったことも知っておくといいでしょう。
すなわち、たかが足のつり、と考えてしまいがちですが
東洋医学では、常に全身のつながりを大切に考えているということです。
対処法
本記事では、足のつりを予防・軽減する対処法として、ツボを中心とした=アラウンドポイントへのマッサージを紹介していきます。
基本的な対処法については下記の記事を参考にしてみてくださいね。
腰の摩擦&皮膚つまみ
腰には腎兪(じんゆ)というツボを中心に、大腸兪や小腸兪といった消化器系に関わりの深いツボが密集しています。
やり方としては、腰骨(背骨)の両脇を拳で摩擦をかけるか、皮膚を指でつまみあげていきます。
つまみにくいところは、背骨の動きに制限が表れているところである可能性がありますので、痛すぎない程度に少しずつ刺激の量を増やしていくといいでしょう。
環跳ポイント&ハムストリング&膝窩ポイント
ふくらはぎや足の指、足の裏がつるようなケースでも、実はお尻や太ももの裏、さらには膝の裏(膝窩:しつか)に凝りや緊張がみられることがよくみられます。
いずれも下肢を支配する大きな神経である坐骨神経とその枝が通過する部位やその近くに位置しているため、先ほどご紹介した腰へのアプローチに加えて適宜マッサージすることで予防と改善に効果が期待できます。
ちなみに、これらの部位に相当するツボや経絡というエネルギーラインの意味を知っていることでより東洋医学的なアプローチが期待できるでしょう。
①ハムストリングは椅子の上にテニスボールなどを置いてマッサージするのがおススメ。
②膝の裏は、膝を曲げた状態で左右の中指を中心に下から押し当てたら前後にズラすようにマッサージするのがコツです。
③環跳ポイントはお尻の横、大転子という骨のでっぱりの上あたり。ここにテニスボールを置いて持続圧迫を加えます。ただし、かなり痛みが強い方が多いため、決して無理はしないようにしてください。不安がある方は専門家に指導を仰いでくださいね。
こむらがえりに即効性が期待できる漢方
ちなみに、こむらがえりの痙攣や痛みに対して
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)という漢方薬が即効性もあることで有名です。
よく、ゴルフをされる方やご高齢の方が頓服薬として常備していたりします。
ただし、甘草の成分など注意が必要なこともありますので
詳しくは漢方の専門医か薬剤師さんに相談するといいでしょう。
まとめ
少し長くなってしまいましたが、東洋医学の観点から「足がつる」原因と対処法について紹介しました。
いかがでしたでしょうか?
ご自分にあてはまることや、日ごろできそうな対処法はありましたか?
今回のような症状に対しては、あくまで東洋医学的な考え方は生活習慣を見直し人生をラクにするヒントとしてお考えいただくのがよろしいかと思います。
実際に何度も足がつってしまったりするような場合は、やはり背骨や骨盤、筋肉といった運動器系へのアプローチが必要になることが多いです。もちろん、基礎疾患などの可能性も頭の片隅に入れておいてください。
追記となりますが、東洋医学では、血(けつ)が筋肉に栄養を与えられなくなる原因として、精神的なストレスが続くことで血(けつ)が不足するということがあります。
血(けつ)は精神活動と密接なため、「肝」や「心」、さらには「脾」や「腎」とも関連があると考えるのです。
少し難しい話ではありますが、ココロとカラダのつながりが東洋医学の本質であることを、なんとなくご理解いただければと思います。
最後に、日頃のメンテナンスとして根本からカラダの緊張をゆるめていくことはとても大切です。
自分だけではどうにもならないこともありますから、そんな時は治療院やリラクゼーションサロンのセラピストにカラダをゆだねてみてはいかがでしょうか。
足がつる、つりやすいクライアントをみさせていただいて思うのは、多くのケースで内臓のはたらきに問題があったり(下痢や便秘など)、姿勢や歩き方が下肢に負担をかけているような状態がみられます。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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