社会的・文化的につくられる性別「ジェンダー」という言葉に注目があつまり、世界で男女平等が叫ばれる昨今、「女性蔑視発言」の問題が取りざたされたのも記憶に新しいところです。
このように社会や個人が取り組むべき課題がある一方で、生物学的な性別によってあらわれやすい特有の疾患や不調があるということについての理解も必要だと私は考えています。
とくに女性の場合、女性ならではの不調や疾病に備えるためにも、病気のメカニズムはもちろん東洋医学的な健康観も知っておいてほしいと思います。
そこで今回は、女性の身体について東洋医学ではどのようにとらえるのかについて概論的に説明させていただきます。
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五臓六腑の「肝」「脾」「腎」が婦人科系と密接
東洋医学は「気」の概念や「陰陽五行」といった哲学的思想をベースに、五臓六腑を中心に心身の状態を見立てて治療や養生を行ないます。
五臓六腑は西洋医学のいわゆる臓器器官(内臓)をそのまま表すわけではありません。
ざっくり説明すると、ある内臓を中心に身体の中で生じるはたらきを分類したのが五臓六腑と考えていただければよろしいかと思います。
例えば、西洋医学では肝臓自体の働きについて考えますが、東洋医学では肝臓とは言わず「肝(かん)」と呼び、そのはたらきは肝臓のはたらきに加え、自律神経やホルモンのはたらきを含んでいると考えます。
東洋医学の中心となる五臓六腑ですが、中でも女性特有疾患、すなわち婦人科系の不調や疾患と関りが深いと考えるのが「肝」「脾」「腎」の3つになります。
脾と女性特有の症状
「血の道症(ちのみちしょう)」と言われるさまざまな不調に悩まされることから、東洋医学において女性は血(けつ)と密接であると考えます。
「脾」の主なはたらきは消化吸収における活動ですが、、「脾」には統血(とうけつ)というはたらきもあるため、「脾」が弱くなることで不正出血したり、経血が止まらないといった症状がおこりやすくなります。(内出血しやすいのも)
また、「脾」のはたらきにより消化吸収された栄養から血(けつ)がつくられるため、月経周期や経血の量、貧血などにも影響すると考えます。
例えば、月経不順がみられる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因の1つとして膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの影響があるとされていますが、「脾」が膵臓のはたらきを意味していることから腑に落ちるところでもあります。
このように、「脾」は「胃」とともに消化器系の中心であるという印象が強い五臓の1つですが、実は女性特有の疾患や症状とも関連しているのです。
脾経にある女性に重宝するツボ
消化器系のイメージが強い「脾」ですが、実は「脾」の状態が強くあらわれる脾経というエネルギーライン上には、女性特有の疾患や症状に効果が期待できるツボが最も多く存在します。
たくさんあるので今回はその中でも特に私が常用しているツボを4つご紹介したいと思います。
隠白(いんぱく)
足の親指の爪の根元にあるのが隠白(いんぱく)。
経血やおりもの、不正出血がなかなかとまらない時に隠白が著効します。
ご自分の爪で押さえるか爪楊枝で刺激してもOK。
三陰交(さんいんこう)
言わずと知れた女性に欠かせない名穴。
「肝」「脾」「腎」の3つの経脈が交差することもあり、「脾」以外が関連する症状にもよく使われるツボです。
不妊治療や逆子治療に加え、妊娠中出産予定日を過ぎても陣痛がこない時にも効果が期待出来ます。
地機(ちき)
膝からおおよそ手の幅ほど下の脛の骨の際に地機(ちき)はあります。
月経時の下腹部痛によく効果があらわれます。
血海(けっかい)
膝の内側でお皿の少し上にあります。
名前の通り、血と関連する症状を改善することが期待できます。
子宮筋腫をはじめ月経不順など、生理がこない時に。
何でもかんでも血流をよくすればいいというものではりませんが、血海はお腹の張り・重だるさをやわらげ排尿困難時にも著効します。
尚、東洋医学では子宮筋腫を瘀血(おけつ)といい、血の巡りが滞った状態と考えます。生理がこなくて苦しいときに血海はトライしてみたいツボと言えるでしょう。
まとめ
今回は「脾」を中心に女性の身体との関連を説明してきました。
「脾」が消化器系にとどまらず、女性の不調に影響しているのか、なんとなくご理解いただけたでしょうか?
ツボに関しては簡単な紹介にとどめましたが、またあらためてツボについては投稿していきたいと思います。
つづいて、「肝」と「腎」についてもお話していきますので、ぜひお読みくださいね。
ありがとうございました。