東洋医学的な頭痛の原因について

以前投稿した記事「頭痛の原因と対処法」につづいて、今回は東洋医学における頭痛の種類や原因について説明していきます。

東洋医学における頭痛の考察の前に

頭痛と言えば、まず器質的な問題がないかを除外することが何よりも先決です。

器質的な問題とは、頭痛の原因となる脳や血管などに明らかな(物理的な)病変があること。

東洋医学の観点から頭痛を考える上でもこの考え方は同じです。

まずは、「見逃してはいけない疾患を示唆する徴候や症状」であるレッドフラッグを見逃さないようにしましょう。

そのうえで、東洋医学における考え方を参考にしていただければ幸いです。

とくに以下のような症状がみられるケースでは速やかに医療機関を受診してください。

  • 50歳以降ではじめて頭痛におそわれた
  • 思い当たることがなく突然頭痛におそわれた
  • 今まで経験したことがない激しい頭痛
  • めまいや吐き気や嘔吐をともなう頭痛
  • いつもと違う痛みや頻度が増していく頭痛
  • 身体の感覚異常やろれつがまわらない症状をともなう

外感型:感染症や異常気象により外邪が侵入するケース

東洋医学では頭痛を、細菌やウイルスなどによる外感(がいかん)型と生活習慣や体質などによる内傷(ないしょう)型に分類します。

  • 外感(がいかん)頭痛:感染症や異常気象など外部要因による頭痛
  • 内傷(ないしょう)頭痛:飲食の乱れや精神的ストレスなどが内臓を害した頭痛

基本的に悪寒や発熱、節々の痛みといった全身症状に頭痛が伴う場合は外感病が考えられます。

そのような時は大事を取って休息するか、医療機関を受診し東洋医学の知識や経験が豊富な医師や薬剤師さんを頼るといいでしょう。

東洋医学には外邪(がいじゃ:ウイルスや異常な寒さなど)が体内に侵入してどのように病気が進行していくのかが詳細に記されている古典があり、漢方の先生方はその知識を元に処方してくださいます。

風邪症状に対して何でも葛根湯を服用される方がいますが、厳密には風邪にも分類がありますので時に注意が必要なケースもあります。

ただ、風邪の初期で軽く悪寒がする程度であれば、お湯に生姜とネギ、味噌を少量入れて砕いて飲むのもおススメ。暖かくして発汗したら汗をふくようにすれば悪化せずにすみます。

あくまで参考までに。

内傷型:生活習慣や精神的ストレスで内臓を害するケース

東洋医学では、痛みの感じ方や質によっても、頭痛をはじめ痛みについて細かく分類します。

しかし、あまり一気に知識をつめこんでも混乱させてしまうだけですのでここでは詳細については割愛させていただきます。

ともかく、外感による頭痛ではない場合、考えられるのは生活習慣やストレスにより五臓六腑を害っている内傷型です。

内傷型には大きく分類して以下の4つのタイプがあります。

  • 肝陽上亢タイプ:「肝」と「腎」のはたらきが低下しているところに、精神的なストレスが引き金となる
  • 気血両虚タイプ:産後や慢性的な消化器系の問題がベースにあるケース
  • 血瘀タイプ:頭部の外傷(けが)や慢性疾患、体質による
  • 痰濁タイプ:飲食の不摂生により体内に余分な水分が痰として停滞することが原因

肝陽上亢タイプ

肝陽上亢(かんようじょうこう)タイプの頭痛はストレスで頭痛が強くなるのが特徴です。

肝には気を巡らせる作用がありますが、ストレスに影響を受けやすく肝の陽気が上昇してしまうことで頭痛やめまい、耳鳴り、不眠や夢が多い、顔のほてりなどの症状があらわれます。つまり、自律神経やホルモンバランスの乱れが大きく影響していると考えられます。

また、はとくに陽気が増し、陰陽バランスが崩れやすい時です。春は「風」が強く吹く時期ですが、東洋医学では「内風(ないふう)」といい体内にもストレスから「風(ふう)」が生じることで頭痛を引き起こすと考えます。

普段からイライラしやすく、血圧が高い方、更年期などホルモンバランスが乱れている時には注意が必要ですね。

このタイプの対処法として大切なのは、気持ちよく、リラックスする方法をみつけることです。

それからもう一つ。この頭痛には、「肝」だけでなく「腎」も関連します。つまり、日ごろの慢性的なストレスに加えて加齢の影響も考慮しておくといいでしょう。

■マッサージで効果が期待できるツボ

風池側頭部からこめかみにかけて胆経のラインと頭頂部にある百会に加え、足にある太衝(たいしょう)太谿(たいけい)も日ごろからケアしてくのがおススメです。

気血両虚タイプ

エネルギーである「気」と「血(けつ)」がともに足りない状態も頭痛の原因になります。

めまいやふらつき、動悸やだるさ、疲れやすいなどの症状をともなうのが特徴です。

このタイプには出産や産後、女性の生理による貧血も含まれます。

特に授乳をしていると、母乳を通じて鉄分が赤ちゃんに送られてしまうため貧血になりやすくなるため、鉄分摂取を意識した食事を心がけましょう。

産後のお母さんはただでさえ心身共にストレスがたまりやすい時期です。周りの人が意識的にサポートしてあげる環境が必要と言えるでしょう。

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それ以外で考えられる主な原因は消化器系の慢性的な不調です。

東洋医学では「肝」「腎」もこのタイプに関わっていると考えますが、中心となるのはやはり「脾」になります。

消化器系を労わりながら、身体をねじる動作をいれた運動を取り入れていくことをおススメします。

■マッサージで効果が期待できるツボ

腹部へのやさしいマッサージに加え、足の三里が胃腸のはたらきを整えるのに有効です。ただし、胃酸が多めの方は足三里のツボはひかえましょう

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【20代後半の女性の例】

3年ほど前に来院されたSさん。

10代の頃から片頭痛に悩まされていました。

生理不順はないということでしたが、2か月前にインフルエンザに罹ってから余計に頭痛の症状が悪化したということで来院されました。

少し前に頭痛外来も受診し、器質的な問題はみつからなかったといいます。

さらにうかがうと、とにかくずっと食欲がなく、だましだまし食べているということでしたので、消化器系のアプローチとして腹部と足三里を中心にマッサージによる施術を行いました。

実は施術の最中も頭痛がひどかったため、くびや頭部には一切触れないようにしました。

30分弱施術をしていく中で頭痛がかなり軽減されたということでこの日は施術を終了し、セルフマッサージと簡単なエクササイズ、食事に対する考え方をアドバイスしました。

5日後おみえになった際にうかがうと、その後頭痛は全く再発しなかったということでした。

また、彼女は現在も定期的に1,2か月のペースで来院されていますが、よほどお仕事で忙しい時以外は頭痛はほとんど出ていないということです。頭痛が出ても、当時のような強い症状はおろか、学生時代から続いていた頭痛が考えられないとのこと。

私自身もここまで顕著に再発しない例は多くないため、とても勉強になりました。

血瘀タイプ

血瘀(けつお)は「血がよごれてドロドロしている状態」を意味します。

ただし、「よごれている」といっても体質的に血液がドロドロしているということだけでなく、事故や怪我によって頭部を打撲したりといった原因があきらかなケースで血管が傷ついて内出血しているようなことも含みます。

このタイプの頭痛は原因があきらかであることと、慢性的な疾患を患っていることがありますのできちんと医療機関を受診するようにしましょう。

また痛みは刺すような痛みで、痛む部位が決まっていること、夜間に痛みが増すこともあります。

鍼やマッサージで治療をすることもありますが、私個人的には信頼できる医師や薬剤師を頼って漢方薬を服用していくこともおススメします。

痰濁タイプ

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痰濁タイプの頭痛には、胸苦しさや食欲不振、手足の重だるさ、日中にやたらと眠い、といった症状をともなうことがあります。

また、頭が重い感じがするような頭痛が特徴です。

基本的には飲食の不摂生が原因となり、体内に水が停滞し「痰」が形成されると考えますから、日ごろの生活習慣をあらためていくことが肝要と言えます。

■マッサージで効果が期待できるツボ

お腹のマッサージに加え、内関(ないかん)で胸苦しさを緩和し、豊隆(ほうりゅう)のマッサージで痰を減らしていくのをおススメします。

頭痛の部位による経絡の分類

東洋医学にはもう一つ、痛む部位によって頭痛を6つに分類することがあります。

その中でも今回は、私たち鍼灸マッサージ師が臨床上で常に意識しているのが以下の4つです。

  1. 厥陰(けついん)頭痛:頭頂部 
  2. 少陽(しょうよう)頭痛:側頭部 
  3. 陽明(ようめい)頭痛:前頭部 
  4. 太陽(たいよう)頭痛:後頭部~項部 

要は、それぞれに属する経脈を考えてツボを選んでいくことになります。

例えば④の太陽頭痛の場合、多くが緊張型頭痛に効果が期待できますが、選ぶツボは痛む部位の近くにある天柱(てんちゅう)はもちろん、遠隔部にある足首の崑崙(こんろん)から先に鍼やマッサージを施す、といった感じです。

まとめ

さて、一週間ほど間隔が空いてしまいましたが、頭痛について2回にわたって投稿させていただきました。

いかがでしたでしょうか?

少し聞きなれない言葉が多くて難しかったかもしれませんね。

ただ大事なことは、難しい言葉を覚えることではありません。

なぜ頭痛が生じるのか、あなたや大切な人の傾向を知ること、知ろうとすることが大切です。

西洋医学と東洋医学はモノゴトのとらえ方や言葉が異なりますが、同じ人間をみていることに違いはありません。

以下に今回の投稿維持のポイントをまとめておきますね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

記事のシェアもお願いいたします。

  • 東洋医学は素晴らしいがまずは器質的な問題がないか除外すること
  • 東洋医学には外感型頭痛と内傷型頭痛に分類される
  • 内傷型頭痛にはざっくり分けると4つのタイプがある
  • 肝陽上亢タイプは季節やストレス、加齢が主な原因
  • 気血両虚タイプは産後や生理、慢性的な消化器系の問題が考えられる
  • 血瘀タイプは外傷や慢性疾患、体質による
  • 痰濁タイプは体質とともに飲食の不摂生が問題となる
  • 鍼灸師などで臨床上考えられる部位別の頭痛タイプがある