顔の痛みを‘顔面神経痛’と言うのは間違い⁉

先生、顔面神経痛になっちゃって・・・目の奥も痛いんです。

それは困りましたね。病院を受診されていないのですか?

はい。まだ様子を見てるんですが、この顔面神経痛は嫌な痛みです。うぅぅ…

私にできることは限られていますから、症状によってはきちんと病院を受診しましょうね。

はい、わかりました。少し様子をみて病院の受診を考えますね。とほほ。



先生、失礼ですが、顔や目の奥の痛みは顔面神経痛とは言いませんよね?

さすがみき先生、おっしゃる通りです。顔の痛みだと勘違いしてしまいますが、医学的には顔面神経痛とは言いません。実際には多くの方が間違った認識をしているようですが、五十肩のことを「肩関節周囲炎」になっちゃったなんてふつう言いませんから仕方のないことですよね。いい機会ですから、少し説明してみましょう。

出典元:Visible Body: Human Anatomy Atlas(人体解剖アトラス)

顔の感覚は顔面神経ではなく三叉神経がつかさどる

顔や目の奥に痛みが表れると、「顔面神経痛」になったのではないかと考える方が多いようで

実際に冒頭のようにクライアントから

「先生、顔面神経痛になっちゃったよ~」なんて言われることが時々あります。

しかし、顔の感覚(触れた感覚・痛み・冷たい・熱い、など)を脳に伝えているのは「三叉神経(さんさしんけい)」であり、「顔面神経(がんめんしんけい)」ではありません。

したがって、医学的には顔の痛みは「顔面神経痛」ではなく「三叉神経痛」の方が正しい名称と言えるでしょう。

もちろん顔の痛み全てが三叉神経痛というわけではありませんのでご注意を。

顔面神経は主に顔の筋肉をうごかす神経

では顔面神経はどのようなはたらきをしているのかというと、主に顔の表情をつくる筋肉を動かしています。

ただし、ここでまた誤解しやすいのが表情を動かす筋肉と、食べ物を咀嚼(そしゃく)する筋肉は別ものであるということ。つまり顔にある筋肉全てを顔面神経が支配しているわけではありません

表情を動かす筋肉は顔面神経ですが、咀嚼する筋肉を支配するのは先ほど紹介した三叉神経なんです。

なんだかこんがらがってしまいますよね(^^)

また、顔面神経は他にもさまざまな働きがあって、味覚を伝えたり、唾液や涙の調節などにも関わっています。

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顔面神経麻痺との混同

そもそも「顔面神経痛」として誤解されやすい要因に、「顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)」という疾患名が一般的によく知られていることもあるのではないかと私は考えています。

顔面神経が麻痺すると、多くが顔の片側に筋力低下または完全な麻痺(運動)が生じるため表情をつくることができなくなってしまいます

また、舌の同じ側で味覚にも影響があらわれることも。

顔面神経麻痺の原因もさまざまですが、私の世代以上(40代半ば)の方はタレントのビートたけしさんがバイクの事故で顔面神経麻痺を患ったことを記憶されているかもしれません。

しかし、たけしさんの顔面神経麻痺はとてもレアなケースと言えるでしょう。

筋肉を動かすことができなくなる運動麻痺と、感覚異常を生じて痛みを感じるものではたしかに全く違う疾患ではありますが名称としてはとても混同しやすい、というのが正直なところです。

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まとめ

さて、神経の話となると少し難しかったかもしれませんね。

簡単にまとめましょう。

顔の痛み:三叉神経痛(他にもある)/顔の感覚と咀嚼筋を支配

顔の筋肉の麻痺:顔面神経痛/顔の表情筋を主に支配(唾液や味覚など)

またいずれ、それぞれについても東洋医学的な視点で考察していきたいと思っています。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。